利息制限法による引き直し計算の際の遅延損害金について
任意整理の手続きや過払い金返還請求の手続きのために、利息制限法による引き直し計算をする場合は、たとえば50万円の元金であれぱ、利息制限法1条に基づき、18パーセントの利率を上限として計算します。
しかし、取引中に一日でも支払の期限に遅れて支払っていることがあると、遅延損害金が発生しているということで、利息制限法4条の利率で計算すべきであると貸金業者から主張されることがあります。利息制限法4条では、利息制限法に規定されている利率の1.46倍までの利率を認めていますので、上記の例であれば29.2パーセントの利率ということになります。
この点については、契約書のとおりに請求しているわけですから争うことができない(29.2パーセントの金利を支払わなければならない)ようにも思えると思いますが、必ずしもそうではありません。遅延損害金利率を請求することが信義則に反するようなケースについて、上記利率の適用を認めない判例が数多くあります。
主に、シティズという商工ローン会社との間で問題になります。
シティズの遅延損害金の主張
控訴人は,同月21日以降も,被控訴人に対し,期限の利益を喪失したことを理由に元利金の一括返済を請求したことはなく,4年以上もの間被控訴人からの分割弁済金を受領し続けていたのであるから,控訴人としては,被控訴人が元金及び利息制限法所定の制限利率による利息の支払をしなかった場合であっても,期限の利益喪失約定を適用することなく,期限の利益を付与して被控訴人の分割弁済に応じていたものであり,また,被控訴人もその前提で分割払いを継続していたとみるのが相当である。 仮に控訴人が被控訴人に対して期限の利益を付与していなかったとしても,控訴人は,期限の利益喪失約定による一括請求をしないで,被控訴人から利息制限法所定の制限利率を上回る利息の支払を4年以上にもわたり受領し続けていながら,被控訴人から過払金返還請求を受けるや,一転して,過払金充当計算において,期限の利益喪失約定を根拠として利息制限法所定の遅延損害金利率による計算方法を主張することは信義則に反するものとして許されないというべきである。
この事案は、借主が支払いを遅延したことにより、シティズがその後の取引においては遅延損害金利率による計算を主張した事例です。裁判所は、遅延損害金利率による計算を認めませんでした。
その理由として、シティズは支払い遅延の後も期限の利益を喪失したとして一括請求をすることはなく、4年以上分割の支払いを受領し続けていたことが挙げられています。支払いが遅れた後も一括請求をせずに従来どおりの分割での支払いに応じていたということは、期限の利益の喪失条項を適用せず、もう一度期限の利益を付与したとみることができる、とされています。
また、支払遅延の後も長期に渡って期限の利益喪失条項を適用せずに分割の支払いを受けて利益を得ていながら、借主から過払い請求を受けると一転して期限の利益喪失条項の適用と遅延損害金利率による計算を主張するのは、信義則に反する、ということも指摘されています。
さらに、これとは別の判例ですが、高松高裁平成19年3月23日判決では、
これらの点に照らすと,被控訴人は弁済の遅延が生じても直ちに一括返済を要求する意思を有していたとは解されず,分割返済の継続を容認していたと認めるのが相当である。そして,本件各貸付けにおいては約定の利息と遅延損害金とが同率ないしこれに近似する利率と定められていることをも併せ考慮すると,被控訴人による遅延損害金に充当する旨の表示は,利息制限法による利息の利率制限を潜脱し遅延損害金として高利を獲得することを目的として行われたものといわざるを得ない。
と判示され、シティズの遅延損害金利率での計算は、単に信義則に反するだけでなく、強行法規である利息制限法の潜脱のために行われたと認定されました。